春の暖かな日差しの中で、蝶が舞うように咲き誇るスイートピー。
卒業式や送別会のシーズンになると、花屋さんの店頭を彩るこの花には、「私を忘れないで」という、なんとも切なく、そしてロマンチックな花言葉が秘められています。
大切な人への贈り物として検討しているあなたにとって、この言葉が持つ本当の意味や、インターネット検索でちらりと目に入る「怖い」「毒」といった不穏なキーワードは、どうしても気になってしまうポイントですよね。
「門出を祝うつもりで贈ったのに、相手を怖がらせてしまったらどうしよう…」
「ワスレナグサの『私を忘れないで』とはどう違うの?」
「色や本数によって、メッセージが変わるって本当?」
そんなあなたの不安や疑問を解消するために、この記事ではスイートピーにまつわる物語を、歴史的背景や植物学的な視点も交えて徹底的に深掘りしました。
単なる花言葉の紹介にとどまらず、贈る相手に誤解を与えないためのマナーや、感動を呼ぶ演出方法まで、余すところなくお伝えします。
この記事を読むことで得られる知識
- 「私を忘れないで」という花言葉が生まれた感動的な歴史と本当の意味
- 検索候補に出てくる「怖い」という噂の真相と、毒性に関する科学的な事実
- 赤、ピンク、白、紫、黄など、色ごとに異なるメッセージの使い分け方
- プロポーズから送別会まで、シーンに合わせて選ぶべき最適な「本数」のルール
スイートピーの花言葉「私を忘れないで」に隠された真実

「私を忘れないで」
この言葉だけを聞くと、どこか未練がましく、悲しい別れを連想してしまうかもしれません。
しかし、スイートピーが持つこのメッセージは、決して後ろ向きなものではないのです。
ここでは、なぜスイートピーが「記憶」を象徴する花となったのか、その意外なルーツと、ささやかれる「怖い」噂の正体に迫ります。
怖いとされる理由と毒性の有無について

Googleなどでスイートピーについて調べようとすると、サジェスト機能で「怖い」という単語が出てきて、ドキッとしたことはありませんか?
お祝いの席に贈る花として、ネガティブな要素はできるだけ排除したいのが親心ならぬ「贈り主心」ですよね。
実は、スイートピーが「怖い」と言われる背景には、大きく分けて2つの理由が存在します。
まず一つ目は、「死」や「誘惑」を連想させる海外の伝承です。
日本では「門出」の象徴ですが、イギリスの一部の地方では、かつて「スイートピーを病人の部屋に飾ると死を招く」という迷信がありました。
これは、スイートピーの香りが非常に強いため、部屋の空気を独占してしまう(と信じられていた)ことや、その散り際が潔すぎることに由来すると言われています。
また、フランスの花言葉には「傲慢」「偽りの謙虚さ」という意味が含まれています。
か弱そうに見えて、強力なツルで他の植物に絡みつき、高みへと登っていく姿が、「したたかさ」として解釈されたのですね。
これらはあくまで文化的な背景によるもので、現代の日本でのギフトシーンにおいて心配する必要は全くありません。
そして二つ目、こちらがより現実的な理由ですが、植物としての「毒性」です。
「えっ、毒があるの?」と驚かれる方も多いかもしれませんが、実はスイートピーの種子(豆)や花粉には毒性成分が含まれています。
【重要】スイートピーに含まれる毒成分「β-アミノプロピオニトリル」
スイートピーはマメ科の植物ですが、その種子には「β-アミノプロピオニトリル(β-aminopropionitrile)」という神経毒が含まれています。
これを多量に摂取し続けると、「ラチリズム(Lathyrism)」と呼ばれる中毒症状を引き起こすことが知られています。
ラチリズムの主な症状は以下の通りです。
・下肢の麻痺
・歩行困難
・知覚異常
歴史を振り返ると、19世紀のスペイン飢饉やインドなどで、食糧難のためにスイートピーの近縁種(Lathyrus sativusなど)を常食した人々が、このラチリズムを発症したという悲しい記録が残っています。
これが「スイートピー=怖い、毒」というイメージの根源にある科学的な事実です。
とはいえ、過度に恐れる必要はありません。
これはあくまで「食用として大量に食べ続けた場合」の話です。
お部屋に飾って香りを楽しんだり、アレンジメントを作成したりする分には、人体に何の影響もありません。
ただし、スイートピーは花が終わるとエンドウ豆にそっくりなサヤを作ります。
家庭菜園で育てている場合など、小さなお子さんやペットが誤って食べてしまわないようにだけ、十分な注意が必要です。
似ているワスレナグサとの決定的な違い

「私を忘れないで」というフレーズを聞いて、もう一つ思い浮かぶ花がありませんか?
そう、文字通りその名を持つ青い小花、「ワスレナグサ(Forget-me-not)」です。
検索ユーザーの中には、この2つの花が持つ「忘れないで」のニュアンスをごっちゃに考えてしまっている方も少なくありません。
しかし、この両者が持つメッセージの「重さ」と「方向性」は、驚くほど対照的です。
| 比較項目 | スイートピー
(Sweet Pea) |
ワスレナグサ
(Forget-me-not) |
|---|---|---|
| メッセージの方向性 | 未来志向・肯定的
「新しい場所でも元気でね」「楽しい思い出をありがとう」 |
過去志向・悲劇的
「死んでも私を愛し続けて」「永遠に記憶に留めて」 |
| 由来となった物語 | 蝶が飛び立つ姿からの連想(飛翔・門出) | ドナウ川で恋人のために花を摘もうとして流された騎士の遺言 |
| 植物学的分類 | マメ科レンリソウ属 | ムラサキ科ワスレナグサ属 |
| 開花・流通時期 | 1月〜3月
(卒業・送別のシーズン) |
4月〜6月
(春本番・初夏) |
ワスレナグサの「私を忘れないで」は、ドイツの騎士伝説に由来しています。
恋人のために花を摘もうとして川に転落した騎士が、最期に花を岸に投げ、「僕を忘れないでくれ!(Vergiss mein nicht!)」と叫んで濁流に飲み込まれていく…という、なんとも壮絶で悲しい物語です。
そのため、ワスレナグサには「真実の愛」という意味がある一方で、「死を超えた執着」や「深い悲しみ」という重いニュアンスが含まれます。
対して、スイートピーの「私を忘れないで」は、もっと軽やかで明るいものです。
卒業式で校舎を後にするときや、転職して新しい街へ行くときのような、「物理的な距離は離れるけれど、心の絆は繋がっていようね」という爽やかな約束。それがスイートピーのメッセージの本質なのです。
ですから、送別会などで贈るなら、湿っぽくなりすぎないスイートピーの方が、断然おすすめですよ。
蝶が飛び立つ姿に由来する別れの物語

では、なぜスイートピーが「別れ」や「門出」を象徴するようになったのでしょうか。
その理由は、花の形をじっくり観察してみると見えてきます。
スイートピーの花びらは、ひらひらと波打つような独特の形をしていますよね。
この形状は、今まさに花畑から大空へ飛び立とうとしている「蝶(Butterfly)」の姿に例えられます。
植物学用語でも、マメ科の花冠は「蝶形花冠(papilionaceous flower)」と呼ばれているほどです。
この「蝶が飛び立つ姿」という視覚的なイメージが、「飛翔」「出発」、そして「ここではないどこかへ行く」という連想を生み、それが転じて「門出」や「別離」という花言葉として定着しました。
【豆知識】シチリアから英国王室へ
スイートピーは17世紀末、イタリアのシチリア島でフランシスコ・クパーニという僧侶によって発見されました。
当時はまだ地味な花でしたが、イギリスに持ち込まれて品種改良が進み、20世紀初頭のエドワード朝時代には爆発的なブームとなります。
当時のアレクサンドラ王妃は、夫であるエドワード7世の度重なる浮気に悩みながらも、スイートピーをこよなく愛し、自身のシンボルフラワーとしました。
華やかに咲き誇りながらも、どこか儚げに揺れるこの花に、王妃は「私を見て」「私の存在を忘れないで」という切実な願いを託していたのかもしれません。
こうした歴史的なエピソードも、「私を忘れないで」という花言葉に深みを与えています。
赤色は情熱や門出の象徴である理由
スイートピーといえば、松田聖子さんの名曲『赤いスイートピー』を思い浮かべる方も多いでしょう。
この曲の影響力は凄まじく、今でも「スイートピーといえば赤!」というイメージを持っている日本人は少なくありません。
しかし、実はこの曲がリリースされた1982年当時、鮮やかな赤色のスイートピーは市場にほとんど存在しませんでした。
作詞家の松本隆さんは、語呂の良さとイメージで「赤いスイートピー」と書いたそうですが、それがきっかけで花屋さんに問い合わせが殺到。
これに応えるために、日本の育種家たちが18年もの歳月をかけて、遺伝的に難しかった「純粋な赤」を作り出したという、嘘のような本当の話があります。
こうした背景から、赤いスイートピーには、本来の「門出」という意味に加えて、「情熱」や「勇気」といったエネルギッシュな意味が込められています。
「夢に向かって情熱を燃やしてほしい」「新しい世界へ飛び込む勇気を持ってほしい」
そんな熱いエールを込めて贈るなら、迷わず赤を選んでみてください。
還暦のお祝いなどにも、若々しい赤として喜ばれますよ。
ピンクや白が持つ優美で純粋な意味

ギフトの定番であるピンクや白は、相手を選ばない万能なカラーです。
それぞれの色が持つ繊細な意味を知っておくと、メッセージカードを書く際のヒントになります。
ピンク:「繊細」「優美」「恋の愉しみ」
桜貝のように薄く透き通るピンク色の花びらは、女性的な柔らかさと優雅さを象徴します。
「恋の愉しみ」という花言葉もあるため、付き合い始めたばかりのカップルや、パートナーへの何気ないプレゼントにも最適です。
また、母の日にカーネーションの代わりに、感謝と優しさを込めて贈るのも素敵ですね。
白:「ほのかな喜び」「優しい思い出」
何色にも染まっていない白は、純粋無垢な心と、過剰ではない控えめな幸福感を表します。
「ほのかな喜び」という言葉は、派手ではないけれど、あなたと過ごした日々が私にとっての幸せでした、という奥ゆかしいメッセージになります。
ウェディングブーケに使われることも多く、新しい人生のスタートラインに立つ人へ、真っ白なキャンバスを贈るような気持ちで選んでみてください。
紫や黄色に込められた敬意と判断力

少しユニークな意味を持つのが、紫と黄色のスイートピーです。
ビジネスシーンや目上の方への贈り物として、非常に使い勝手の良い意味を持っています。
紫のスイートピーは、原種に近い色であり、古くから高貴な色とされてきました。
花言葉は「永遠の喜び」
これは、一時的な快楽ではなく、精神的に成熟した深い喜びを指します。
定年退職される上司や、長年お世話になった恩師へ、「これからの第二の人生が、喜びで満たされたものになりますように」という敬意と祝福を込めて贈るのに、これ以上ないほど適した色です。
一方、黄色のスイートピーには「判断力」や「分別」という意味があります。
黄色は視認性が高く、光や注意を喚起する色(信号機など)であることから、「正しい道を選ぶ力」と結びついたと言われています。
「迷わずに自分の信じた道を進んでください」というメッセージを込めて、受験生への激励や、部下の昇進祝い、あるいは独立して起業する友人へのエールとして贈ると、あなたのセンスが光ること間違いなしです。
スイートピーの花言葉「私を忘れないで」を贈る際のポイント
花言葉の意味をしっかり理解したら、次は実践編です。
スイートピーを贈る際、ただ束ねて渡すだけではもったいない。
実は「本数」にも隠された意味があるのをご存知でしょうか?
ここでは、あなたの想いをより深く、そしてマナー良く伝えるための贈り方のテクニックをご紹介します。
本数によって変化するメッセージ性
欧米には「ダズンローズ(Dozen Roses)」といって、12本のバラを恋人に贈ると幸せになれるという習慣がありますが、これをスイートピーに応用した「ダズン・スイートピー」という考え方があります。
花束の本数は、言葉にしにくい感情を代弁してくれる強力なツールです。ポジティブな意味を持つ本数と、逆に避けるべき本数を知っておくことで、誤解を防ぎ、相手により深い感動を与えることができます。
1本や12本が持つポジティブな意味

まずは、積極的に選びたいおすすめの本数とその意味をご紹介します。
| 本数 | 意味・メッセージ | おすすめのシーン |
|---|---|---|
| 1本 | 「一目惚れ」「あなたが運命の人」 | 初デートの帰り際や、日常のちょっとしたサプライズに一輪挿しで。 |
| 9本 | 「いつまでも一緒にいて」 | 遠距離恋愛になる恋人や、これからも関係を続けたい友人へ。 |
| 10本 | 「あなたは完璧です」 | 才能を認めている同僚や、尊敬する先輩への称賛として。 |
| 12本 | 「私と付き合ってください」「奥さんになってください」 | プロポーズや告白の王道。12の誓い(感謝・誠実・幸福・信頼・希望・愛情・情熱・真実・尊敬・栄光・努力・永遠)を込めて。 |
| 25本 | 「あなたの幸せを祈っています」 | 転勤や退職など、門出を迎える人へ贈るのに最適なボリューム感。 |
| 50本 | 「永遠」「恒久」 | 金婚式や、長い人生を共にしたパートナーへの感謝に。 |
特に12本のスイートピーは、バラほど気取らず、それでいて深い愛情を伝えることができるので、春のプロポーズには特におすすめです。
「私を忘れないで」という花言葉と合わせると、「これから一生、僕のそばにいて(=僕のことを忘れる暇なんてないよ)」という、高度な愛のメッセージにもなりますね。
15本などネガティブな本数は避ける

一方で、本数によってはネガティブな意味を持ってしまう場合があります。
知らずに贈ってしまい、後で相手が調べて気まずい思いをしないよう、以下の本数は避けるのが無難です。
避けるべき本数(タブー)
- 15本:「ごめんなさい」謝罪の意味が強いため、お祝いや愛の告白には不向きです。喧嘩の仲直りならアリかもしれませんが、門出のギフトとしては避けましょう。
- 16本:「不安な愛」「私たちの関係はどうなるの?」という不安定な心理を表します。遠距離恋愛のスタート時にこれを贈ると、相手を不安にさせてしまうかもしれません。
- 17本:「絶望の愛」拒絶や、修復不可能な関係を意味します。別れ話の時に贈るならともかく、ギフトとしては絶対にNGです。
もちろん、これらはあくまで花言葉の一説に過ぎませんが、「15・16・17」という数字の並びは避けると覚えておけば間違いありません。
卒業や送別会で贈る際のマナー

3月の卒業式や送別会は、スイートピーが最も活躍するシーズンです。
しかし、この時期特有のマナーや注意点も存在します。
まず、「持ち運びへの配慮」です。
スイートピーは茎が水分を多く含んでおり、花びらも非常に薄くてデリケートです。
満員電車で押しつぶされたり、長時間水につけずに持ち歩くと、すぐにしおれてしまいます。
花屋さんでオーダーする際は、「送別会で渡してから持ち帰るまで時間がかかる」旨を伝え、保水処理(エコゼリーなど)をしっかりしてもらうか、茎を短めにカットしたコンパクトなブーケにしてもらうと親切です。
次に、「他の花との組み合わせ」です。
スイートピー単体も素敵ですが、他の花と組み合わせることでメッセージ性が増します。
定番は「カスミソウ(花言葉:感謝)」との組み合わせですが、春の花である「チューリップ(思いやり)」や「ラナンキュラス(晴れやかな魅力)」と合わせるのも素敵です。
ただし、「別れ」を連想させすぎる組み合わせには注意が必要です。
例えば、スイートピー(門出)に加えて、ネガティブな意味を持つ花(例えば黄色のカーネーション「軽蔑」など)をうっかり混ぜてしまわないよう、花屋さんと相談しながら選ぶのが確実です。
スイートピーの花言葉「私を忘れないで」を届ける

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。スイートピーの「私を忘れないで」という言葉が、決して怖いものでも、重たいものでもないことがお分かりいただけたでしょうか。
それは、蝶が空へ舞い上がるような「未来への希望」と、離れ離れになっても消えることのない「優しい記憶の絆」を約束する言葉です。
「今までありがとう。離れても、私たちの楽しい時間は色褪せないよ」
そんな温かい気持ちを込めて、この春、あなたの大切な人の門出にスイートピーを贈ってみてください。
そのひらひらとした花びらは、きっと受け取った人の心の中で、いつまでも美しく咲き続けるはずです。
